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2011.11.01理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#73 学園の宝物と英語力・・・山階鳥類標本展示室

理事長・学園長
古 賀  正 一

 10月も行事の多い月でしたが、天候にめぐまれ、生徒達も存分に活躍し、青春をエンジョイしました。主なものを上げると、高校球技大会(6日、7日)、中学体育大会(9日)、SSH物理教育研究会(13日、全国30校以上の教師参加)、日本ユネスコ招聘の中国教師団日本視察研修で学園訪問(中国各地域代表30名の教職員による視察。授業参観、ミニシンポジウム、中国料理/数学を中国教師が中1生徒へ模擬授業)、中間試験(24日-27日)、芸術鑑賞会(青島広志指揮神奈川フィル4回公演、28日、11月1日)、中学・高校受験生対象大説明会(29日、30日計4回、4300名来校)、中3全員駿台模擬試験(30日)などです。

さて学園本館2階の中央部古賀教育センターに隣接し、学校としては珍しい施設、鳥の標本を展示した『山階鳥類標本室』があります。世界的に著名な鳥類学者であり、山階鳥類研究所の創設者であった元侯爵 山階芳麿博士から寄贈されたものです。標本は105個体あり、いずれも貴重な学園の宝物であります。

学園創立の当初、創立者 古賀米吉は、英語教師として博士の英語の論文執筆や英語での講義等の助言の役割で、渋谷区南平台の山階邸をしばしば訪問していました。博士とのこうした親交が縁で、昭和14年12月、当時の旧制市川中学校に標本が寄贈されました。昭和14年といえば、学園創立3年目、古賀49歳、博士は北海道大学で理学博士をとるべく調査研究の39歳であり、鳥類の専門家と英語の専門家が互いに教え教えられる交友関係であったと思われます。この標本は長らく旧校舎の図書館で保存してきましたが、自然劣化、微細な塵の沈着、紫外線の劣化などが見受けられ、新校舎移転の平成19年春、標本の補修、洗浄を行いました。

当時副校長の根岸昇先生を中心に今後長期の保存展示に耐えられるよう整備されました。その際 『我孫子市鳥の博物館』の時田賢一氏(市川高校23回卒業生)、内田科学社にお世話になりました。

現在『山階鳥類研究所』は、千葉県我孫子市にあり、総裁 秋篠宮文仁親王殿下、理事 長島津久永氏、所長 林良博氏で、林所長には、来年1月土曜講座でお話をいただく予定です。

山階博士と家庭教師古賀米吉の関係は、昭和14年以前からで、記録によれば昭和17年まで続いており、太平洋戦争開戦後も続けられていたことになります。やはり自然科学の世界は、論文は英語、どんなときでも国際的であったのでしょう。

山階博士との英語の勉学について、まさに共同作業であったことが古賀米吉の文章から伺えます。「・・・私はかつて鳥の学者に、英語で書かれた鳥の本を教えたことがある。この場合、教えたというとうそになる。鳥のことをぜんぜん知らない英語教師と英語のあまりできない鳥の研究家とがしばらく対話をしていると、解決してくれるのはいつも鳥の研究家の方であった。読文力とか読書力とかいわれるものは、用いられている語や句や文法に関する知識のほかに、文章の内容に関する知識が伴わなければならない。だれにでもできる小語でも読む人によって理解の深さにひどい違いがある。文は人なりというが、読む人も人だと言いたい・・・」(昭和42年学園図書館報『読む、考える、記録する』より引用)

有名中学(旧制)の英語教師、英国留学経験(ロンドン大学)、英語本の著述、予備校名物教師を経験した当時の古賀米吉は、英語の達人であったと思われます。英語に関しての識見は、昨今の英語力向上に通じるものがあります。

古賀米吉の英語力についての見解は、各所に書かれ話されています。要は語学だけ学んでも駄目で中身の理解が不可欠であることを強調している点、また海外経験から通じる英語(コミュニケーションツール)に言及している点が特徴です。

1、英語は、読む・書く・聞く・話す(RWLS)4技能共に大切。

2、できるだけ英文を多読せよ、語彙を増やせ。

3、英文の読解には、単なる文法の知識のみならず、中身について理解と背景の深い知識と教養が必要。英文の読解には、他の教科の知識をなおざりにできない、常識・教養が必要。

4、難関大学の入試問題は、日本語に訳しても中身が分からぬもがある。これは英語の力というより、思想・教養の力、人の力である。

5、教科書を見ず英語の朗読を聞け。耳で多くの英語を聞き大意をつかむこと、ことばは耳から。

6、できるだけ声を出して文章を読むこと、基本文は何回も書き読むこと でものになる。

今はよい教科書・参考書があり、DVDがあり、よい教師が周囲におり、ネイティブの先生や外国人との交流も多く、当時とは環境が格段に違うが、外国語特に英語習得の基本は変わらないと思います。