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2011.05.01理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#67 世界の中の日本を考え、自分の未来を考える

理事長・学園長
古 賀  正 一

 東日本大震災からすでに2ヶ月弱、被災された方々はいまだに不自由な生活を強いられている方が多く、心が痛みます。一方被災地においても、いくつかの市町村が立ち上がり、自衛隊やボランテイアとともに、少しずつ復旧への道を歩かれているのはうれしい限りです。

当学園も被災地への支援として、教職員・学校法人、生徒・保護者、同窓会など種々のルートを通じ協力頂き、日赤その他を通じ義捐金を送ってきました。また教員の縁戚のいる被害の大きい地域の子供達への支援として、鉛筆・ノートを含む大量の文房具や参考書などの現物を送付し、大変喜ばれました。これも生徒、保護者、教員の協力と善意によるものです。夏場に向かっての節電対策は、授業を第一に、知恵を絞り工夫し昨年比20%カットを目標に対策をうちつつあります。電気をジャブジャブ使う生活からの脱却、我慢と忍耐を経験し、知足(足るを知る)の幸せを知ることです。長期間かかる復興に立ち向かい、日本人一人一人が持ち場持ち場で、力を尽くす時です。

さて学園も4月から平常通りの落ち着きを取り戻しています。朝 校門に立つと、『おはようございます』の生徒達の元気な声に勇気が出ます。挨拶はコミュニケーションの基本ツール、国際社会で活躍するには、挨拶べたでは相手にされません。外国人は挨拶が上手です。『挨拶はこちらから先に』が大切です。

入学式後、中学校1年の春期セミナー(4日間)、高校新入生セミナー、各学年保護者会、同窓会の年次幹事会(代表者会)など予定通り進み、あっという間の一ヶ月でした。生徒による部活や同好会などの紹介プレゼンテーションは熱が入りました。またSSHの研究を全員が英語で説明できるように、英語プレゼンテーション特別講座もスタートしました。

この4月の行事で特筆すべきは、外部講師による『世界の中の日本』と題する3日間の特別講義でした。著名な外資系コンサルタント会社の日本代表の先生によるもので、高校3年、高校2年生の有志 約60人が参加、密度の濃い双方向講義、質疑応答、課題に対してのグループ討議と発表、終了後の宿題と多彩でした。 具体的には…

【セッション1】世界はどう変化しているか?(人口爆発と新興国の成長、水資源・エネルギー資源、環境問題、世界の多極化とパワーバランスの変化)、その中で日本はどう変わっているか?(人口減少と高齢化、社会保障、経済の停滞と世界におけるGDPシェア低下、経済の質の低下と世界での競争力、産業構造の課題、財政問題、大震災の与える影響)

【セッション2】世界企業の陣取りゲーム(世界のトップ企業、フラット化する世界、技術で勝って事業で負ける、快進撃を続ける世界企業の例・・ビール産業、電子産業、日本企業の課題と壁)

【セッション3】これからの日本の進むべき道(各国の対策、現政権の政策、法人税減税と消費税・所得税増税)、日本・韓国の経済成長戦略(韓国のIMF危機以降の戦略、経済産業省の産業構造ビジョン2010)、必要とされる人材

以上 通常授業では聞けない今日の世界と日本の状況を俯瞰できる内容でした。

各セッションで課題が出され、グループ(7-10人)ごとに発表用紙を使って解決項目を列挙し、討議し発表します。正解のない答えをめぐり、討議と意見交換など、通常授業にない方式でした。現実に即したレベルの高いキャリア教育であり、進路や自分の将来を考える時期に極めて刺激的な授業でありました。生徒の理解力と感覚に驚くとともに、この手の内容はまだ知識不足など課題もありました。最初消極的な生徒も、すぐに発言も活発になりました。

留学や国際社会に出たとき、自分の意見を積極的に発言しないと相手にされません。根拠説明や論理的思考ができること、自分の知識をベースに想像する力、人の意見を理解する力は非常に重要です。

若者や教育への批判が多い昨今ですが、教育現場では気概をもって一歩を進める新しい試みが大切です。最近の若者の内向き志向やマナーの悪さなども、大人が先ず範を示すこと、若者の背中を押しチャレンジさせることが重要です。また実社会でキャリアを積んだ有能な人々が、教師と連携し学校の場で教育へ参画することはますます重要になります。

特別講師の先生からの宿題である、10年後どんな自分になっていたいか、どんな日本にしたいか、またそのために何を学んでいきたいかの問いに対して、生徒達の答えが楽しみです。特別講師に心から感謝しています。

『人生はどんなにつらいことがあっても生きるに値する。それには勇気と希望と想像力が必要だ。』(チャップリンの映画;ライムライトより)