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2021.09.01理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#192 コロナ禍の中あらためて読書の大切さを考える

2021.9.1

市川学園理事長・学園長 古賀正一

千葉県はまん延防止等重点措置から更に8月2日に緊急事態宣言が発出され、又8月20日までの期間が9月12日まで延長されました。緊急事態宣言はすでに21都道府県となり、デルタ株中心に感染拡大が続き、医療状況も厳しい環境にあります。学園は生徒の皆さんの学業を保障しつつ、生徒・保護者・教職員一体となり、感染防止にお互いに力を入れねばなりません。ご協力を切にお願いします。学園としては2学期から隔日登校の分散登校を行い、登下校の人数を縮小し学内や教室の密度を下げます。主要大規模行事(なずな祭、高校球技大会等)については、11月以降に延期いたします。

さて、コロナ禍では、家庭にいる時間、自分の時間を多く持てますので、是非とも生徒の皆さんは勿論、保護者の皆さんも読書を楽しむ機会としていただければ幸いです。読書は、学園「第三教育」の中核であり、生涯続くものです。朝の10分間読書から始まり、調べ学習、課題研究、進路学習、教養教育さらに大学や社会に出ても、学問、研究、自分のスキルアップのためにも趣味としても不可欠です。
最近では、リカレント教育が重視されています。生涯にわたって教育と就労のサイクルを繰り返す教育制度で、リカレント(recurrent)教育即ち「回帰教育」「循環教育」などと言われ、また仕事に就いてからも必要と感じたタイミングで学び直すため、「学び直し教育」「社会人の学び直し」とも呼ばれています。ここでも読書は必要です。

読書は学習、仕事、研究など目的を持って調べ学ぶ読書(目的型読書)、社会の進歩・興味関心、教養の読書(教養・興味関心型読書)、更には本当に好きな本を自由に楽しむ読書(楽しみ型読書)など多様です。読み方も複数の本を並行して読む、一つのジャンルまたは特定の作家の本を集中して読むなど、人によってそれぞれ多様です。また一人で読む読書、紹介しあう読書、読書の感想など語り合う読書会などいずれも重要です。
読書は偶然の出会いでもあり、一生のうちで本当に座右に置き繰り返し読む本もあります。また熟読、速読、あとでじっくり読むため買い置く(積んどく)など多様です。

学園には第三教育センターの生徒の読書会、古典・哲学の熟読対話の特別ゼミである『市川アカデメイア』等多くの人と感想や意見を述べ合う対話型読書会があります。今回は永年 学園の評議員、教職員、保護者、地域の人などでつくる『生き方読書会』について紹介したいと思います。
コロナ前は毎月1回夕刻 学園に集まり、所定の本について感想や生き方を述べ合う読書会であり、楽しい交流会でもありました。コロナ禍の現在は、指定本の感想や所見を幹事がメールで集め、関係者にネットで配信し、読書感想文冊子をつくっています。
読書会は1996年から実施しており、すでに280冊以上の本を読み、多様な学園関係者の交流の場にもなってきています。
今年は、例えば『コロナ後の世界(リンダ・グラットン他)』『感染症の世界史(石弘之)』『思考の整理学(外山滋比古)』『読書について(ショーペンハウエル)』『知の体力(永田和宏)』『生の短さについて(セネカ)』『貞観政要(呉兢、NHK100分de名著)』『論語と算盤(渋沢栄一)』などです。

これからは、生徒も職業人も常に学ぶ生涯学習、学び直しが不可欠であり、まさに「第三教育」の時代です。目的調査のインターネット検索や日々のマスコミ情報、SNS情報だけでなく、紙の本の読書が益々必要な時代です。
8月11日発表された国立青少年教育研究機構の「子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究~書離れの実態と、読書好きを育てるヒント(※)」 によれば、

  • 子どもの頃の読書量が多い人は、意識・非認知能力(自己理解力、批判的思考力、主体的行動力)と認知機能(一時的記憶力)が高い傾向がある。
  • 興味・関心にあわせた読書経験が多い人ほど、小・中・高を通した読書量が多い傾向にある。
  • 年代に関係なく、本(紙媒体)を読まない人が増えている(平成 25 年と平成 30 年を比較して)。
  • 一方で、スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスを使った読書は増えている。
  • 読書のツールに関係なく、読書している人はしていない人よりも意識・非認知能力が高い傾向があるが、本(紙媒体)で読書している人の意識・非認知能力は最も高い傾向がある。
  • 紙媒体での読書は、AI、デジタルの時代こそ大切であり、読書の習慣を持つことは、人生100年時代のかけがえのない楽しみの一つとなるでしょう。

『良き書物を読むことは、過去の最も優れた人と会話するようなものだ。』
ルネ・デカルト(フランスの哲学者・数学者)

『その生涯において、何度も読み返し得る一冊の本を持つ人は幸せな人である。さらに、その数冊を持ち得る人は至福の人である。』
アンリ・ド・モンテルラン(フランスの作家)

(※注); 発表と報告書の詳細は下記のURLを参照下さい。https://www.niye.go.jp/about/report_list/52449381061131aadbb53220210811093245.html