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2021.03.03理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#186 コロナ禍の中頑張った卒業生の皆さんへ

20高卒1       2021.03.03
市川学園理事長・学園長 古賀正一

    緊急事態宣言が出された中での3学期。感染症防止対策を徹底しつつ、授業も予定通り進み、部活動やネットでの外部活動なども粛々と行われました。中学の入試も無事終わり、2月11日の新入生ガイダンスは、密を避けるため、午前・午後半数に分け実施し、4月の新入生330名が決定しました。高校から入る高入生は、公立高校入試(今回千葉県は1回)の合格発表後の3月7日のガイダンスで決まります。大学進学は、初めての大学入学共通テストをほぼ全員が受け、推薦型選抜の合格が決まり、国公私立の2次選抜試験もほぼ終了し、発表が逐次されています。希望通りの道に進めた生徒には心からの祝福を、希望が満たされず浪人する生徒には、再チャレンジへの心からの激励と応援をしています。

今年は3月2日に73回目(共学13回目)の高等学校卒業証書授与式を実施し、432名が巣立ちました。来賓や後輩は参列せず、音楽や別れの合唱もなく、卒業生と保護者、教職員のみ短時間での心のこもった式典を行いました。以下は小職の卒業式での祝辞です。


祝    辞

432名の第73回市川高等学校卒業生の皆さん、心をこめて卒業おめでとう。
保護者の皆様、ご子息ご息女は心身ともにたくましく成長され、立派に卒業されます。心からお祝いを申し上げます。
卒業式はコメンスメントといわれるように、新しい出発です。『君は君  我は我なり  されど仲良き』『この道より  我を生かす道なし  この道を歩く』いずれも武者小路実篤のことばですが、皆さんそれぞれ違う自分の特徴を存分に生かし、本当にやりたいことを見つけ、我が道を切り開いてください。
これからは、皆さんが自分自身で選択することが多くなると思います。日々の行動選択から大学の専門分野、研究課題、就職、結婚など、情報を集めご家族や信頼する人に相談することは大切ですが、最後は自分で選ぶ判断力と自己決定力が大切になります。それには多くの学びや体験を通じ、人生如何に生きるべきかを常に考えることだと思います。
昨年は2月末より突然の休校で、遠隔授業やオンラインホームルームとなり、6月にやっと対面授業を再開できました。コロナ禍の中、進学に向き合う高校3年生としての1年間、本当につらく苦しいことがあったと思います。皆さんよく頑張った。この体験は将来に必ず生きます。悪いことばかりではありません。

感染症の歴史は古く、実はこの目に見えない災禍は、地震・洪水・火事・戦争などよりも死者数が多い災害です。100年前のスペイン風邪の頃は、病原は同定されていませんでした。我が国で約45万人、全世界では4000万人以上の人が亡くなったといわれています。今は電子顕微鏡、遺伝子工学のお蔭でウイルスの正体ははっきり同定されています。ワクチンが異例のスピードで開発され、効果が実証されたのも、遺伝子解析をはじめ生命科学の進歩のお蔭です。
ウイルスとの戦いは、感染症拡大防止と経済及び日々の生活を両立させる極めて難しい舵取りですが、この間多くの改善すべき課題も発見されました。感染症危機管理の体制、初期対策のスピード、デジタル化の遅れ、ワクチンの国内開発・製造の必要性、保健所や医療体制の仕組みの改善、グローバルなサプライチェーンのリスク、必須な商品の自給自足の必要性、生活困窮者へのきめ細かい支援など、平時には後回しにされた課題が浮き彫りにされました。
国や自治体による強力な対策や公助が極めて大切ですが、一方 我々一人一人も出来ることしっかりやる責任と自助の力、互いに助け合う共助の力も大切です。皆さんもコロナ収束いまだしの中、感染症拡大防止の当事者、協力者として、引き続き尽力してほしいと思います。

我が国の大学は歴史的に理系、文系と分かれていますが、これからは理系・文系両方の知見、いわば『総合的な知』ともいうべきものが必要になります。新しい研究や新規事業の創出は既存の学問領域の境界や異なる事業の連携と協働から多く生まれます。脱炭素社会の実現などSDGsに関する地球規模の課題、人生100年時代の高齢化問題、デジタル革命のルールや法整備、GAFAなど富の偏在、パンデミック対策、再生医療における倫理の問題など、理文にまたがる課題は山積しており、研究し解決すべきことは無限です。皆さんの力が求められています。
これからは理系文系の枠にとらわれず新しいことへの関心と挑戦する意欲をもち、多様な人と協働する力が極めて重要になるでしょう。広い教養を土台とし、自分の専門分野を深く追求し、新しいことにチャレンジできる『課題発見・問題解決型』の人間こそが、これから求められます。皆さんが学園生活で得た『常に自ら学び考え生涯学び続ける』第三教育力を磨き、是非『第三教育の達人』を目指してほしいと思います。

最後に皆さんは、ご両親はじめ先生方やお世話になった方々への感謝の気持ちを忘れないでほしい。人間はひとりでは決して生きられない、多くの人のお蔭で生かされている存在なのです。また人間・ホモサピエンスは生きものひとつであり、他の多くの生きものや自然と共に生き、自然によって生かされているのだという謙虚な気持ちを忘れずに、決して傲慢になってはいけないと思います。

卒業後うれしいとき、悩んだときなどいつでも学校に来てください。市川学園は常に皆さんのホームです。皆さんがそれぞれの場で『一隅を照らす人』として活躍する未来を期待し、私のお祝いの挨拶とします。

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