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2020.08.06理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#179 正直五両思案三両・・・誠実と気概

 2020.08.06
tec1市川学園理事長・学園長 古賀正一

 新型コロナウイルス禍の中、8月6日には終業式を迎え、今まで経験したことのない多事多端の1学期が終了しました。8月7日から31日まで、25日間の短い夏休みになります。引き続き危機感を持ち、感染に十分注意し、熱中症に留意しながらの夏期講習、進路指導、部活動、対外活動です。感染防止の基本である3密回避、手洗い励行、大声でしゃべらないことなどを守りつつ、有意義に過ごし、元気に9月1日からの2学期を迎えられることを念願しています。

今は感染症COVID-19の収束更には終息を念願しつつ、各自が今やれること特に感染拡大防止に良識を持って自助努力に注力すべき時であり、日本人にはその力があります。
また生活や社会や世界も変わらねばならぬことが多々あり、むしろ原点に戻るべきものもあります。個人の生活では人生で本当に大切なことが意識され、仕事や家族と個人における真の幸せとは何かが改めて考える機会でもあります。

社会も今まで見えなかった或いは遅れていた課題が浮き彫りにされつつあります。
社会システムのICT化の推進(教育のICT化を含む)、危機管理と災害対策の仕組み、都市への一極集中から地方への分散、企業の株主至上主義からステークホルダー主義(全ての利害関係者重視)への転換、在宅ワークを含む働き方改革、格差の是正と個人の幸福のあり方などです。
また自助共助公助のバランスや自利利他の精神が重要になるでしょう。日本は中庸の精神が重視され、昔から近江商人の経営哲学として『三方よし』の精神(売り手によし、買い手によし、世間によし)がありました。

さて江戸時代から長く続いてきた企業やお店には、代々引き継がれた家訓があり、今に引き継がれ一部は社是になっています。
特に京都には小さいながら100年以上いや数百年続いている企業が沢山あります。その中の一つである(株)宇佐美松鶴堂は、京都本願寺の近くで230年の歴史を刻んできました。掛け軸など国宝や文化財などの修理修復をする表具業の会社です。

その家訓の一つに、『正直五両、思案三両、堪忍四両、分別二両、用捨一両』があります。意味するところは、商売や事業をするときに大切なのは、用捨即ち取捨選択と分別即ち理性的な判断であるが、それ以上に思案即ち知恵を絞ること、更には堪忍即ち忍耐が大切であること、しかし最も大切で価値があるものは、正直であること。これこそが最終的に信用に結びつくもので、長期に成功を続けるための一番大切な心がけであるとしています。
一方この言葉は、元々は豊臣秀吉が最初に云ったという説もあります。
(豊臣秀吉に関する図書展の目録、東北大学付属図書館、昭和38年5月より)

目録28; 関白秀吉合薬太田南畝筆巻子本
「一正直五両一堪忍四両一思案三両一分別二両一用捨一両
右一貼宛毎日可用子孫延命之薬也」「禁物無理慮外無心虚言油断」

私立学校も長く存続するためには、建学の精神をしっかり堅持し、常に進歩した卓越した教育を実践し、学校組織体としても、組織員の我々教職員も、顧客である生徒や保護者から選ばれ続け、且つ利害関係者である生徒・保護者、卒業生、取引会社、地域、県・国から信頼され、評価されることです。
また教職員も利害関係者としての貢献と生きがいを持って働けることです。このためにも、法人も教職員も常に正直であるということは、信頼を得るもとでありましょう。

当学園は教職員の行動指針として、『誠実と気概』をあげています。
誠実は、うそ偽りごまかしがないこと、まさに正直であることです。本学園の教育目標である『紳士淑女たれ』の行動指針にも通じます。英語では、Integrityです。
ただし『誠実』だけでは、この変革時代の行動指針としては不足で、『気概』をあげています。『気概』は、新しいことへのチャレンジ精神であり、やり抜く力であり、英語では Grit です。

いずれにしろ、正直者は馬鹿を見るということわざもありますが、そういう世の中であってはならないと思います。コロナ禍の時代、災害時代だからこそ、不自由な中、常に互いに信頼を得るためには自助の精神と、互いに助け合う共助・公助の精神が必要であり、その基本は正直であることでしょう。

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