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2024.04.01理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#223 若さの持つ未来と可能性

2024.4.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

23年度を無事終える事ができました。昨年5月コロナ感染症が5類指定になって以降、通常の学園生活となり、各種の行事もコロナ前の平常に戻りました。内外共に多事多難な折に、こうして平和平穏に新年度を迎えられることは、本当に有難いことです。国内では、能登半島地震災害地域、海外ではウクライナやガザ地区などの生徒・学校のことを思うと胸が痛みます。

 今年は中学329名、高校422名の卒業生を送り、また中学327名、高校435名(内進生326名、高入生109名)の新しい生徒を迎えることになりました。
 年度末に行う恒例の年間総括報告会(PDCAのC)で、学年、教科、部・委員会など25部門の報告が行われましたが、非常に充実した1年の報告でした。以下目に見えるアウトプットのいくつかをあげます。
➀ 進路としての目標の一つであった東京大学現役合格者数20名以上に対し、27名を達成し、既卒者含め31名となりました。勿論他の国公立、私立、医学部等希望の進路にも数多く合格しました。一方思い通りに行かなかった生徒への激励・支援が重要で、長い人生では、回り道・やり直しも大切です。
② 文科省の2024年度SSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校として47校が公表され、本校が4期目の指定を受ける吉報がありました。2024年度から2028年度まで5年間、引き続きSSH校として活動します。4期目の本校の研究課題は「自立的に取り組みつつ、幅広い視野を備え、新しい領域を切り開く生徒の育成」とし、学際的領域の研究の推進と本校の科学技術人材育成プログラム「市川モデル」を外部に発信し広めてゆくことです。
➂ 入試において、中学・高校合わせて志願者数が4585名で昨年に続き4500名を越え、中学・高校ともに入学者が定員(中学320名、高校430名)に極めて近い形で決まったことです。少子化の中、常に志願者が安定し、受験生および保護者から信頼されるよう、数多くきめ細かい説明会や学校見学など広報活動を続けてまいります。

 さて市川中学校卒業生のほとんどが市川高校に進学(内進生:今年は329名中326名)するので、中学の卒業式は修了式として、3月23日に学内関係者のみで実施しました。理事長挨拶、卒業証書授与、賞状賞品授与、校長式辞、卒業生より記念品目録贈呈の次第で、簡素に心をこめて行われました。小職から、次の要旨の挨拶を述べました。
 『皆さんのほとんどは市川高校へ進むので、卒業という実感がないかも知れないが、今日は義務教育課程を修了する節目の日であり、新たな出発の日です。皆さんは入学以来コロナ感染症の影響を大きく受けてきましたが、よく頑張り、5類に指定されて以降、コロナ前に近い学園生活を楽しんだと思います。校外学習、国内修学旅行、なずな祭、演劇祭、芸術鑑賞会、合唱祭、更に部活や課外活動などを通じ、大切な青春の思い出を紡いだことでしょう。
 高校では、自ら学び考える第三教育の力を更に磨いて下さい。学業は勿論のことあらゆる活動、人・物・自然との出会いや出来事など全ての出会いが、みな自分の先生と思い自発的に学んで下さい、私の好きな言葉、作家吉川英治氏の「われ以外みなわが師」の気持ちで学ぶことが大切です。また高校では、自分の本当に好きなこと、やりたいこと、将来の進路や職業などを考える時期です。更に人生いかに生きるか、幸福とは何か、社会へ如何に貢献すべきかなどを深く考える期間でもあります。「君は君 我は我なり されど仲良き」(武者小路実篤)、人と違う自分の特色を見つけてください。
 さて民法では18才を成人としており、あと3年後ですが、昔は15才はすでに元服という式を終え、成人でした。幕末の福井藩に橋本左内という立派な人物がいました。15才の時に書いた「啓発録」の中で、自分の決意として「稚心を去れ」と述べています。稚心とは幼稚な心、つまり子供っぽい心を捨てよう、甘える、勉強や練習を怠ける、わがままや人に迷惑をかけるなどから脱却しようということです。そのあとに立志、志を立てよと言っています。如何に人生の目標を立てるか、如何に生きるかということです。「稚心を去れ、志を立てよ」15才の自分への誓いであり、皆さんにもふさわしい誓いと思います。
 今世界は戦争や紛争が絶えず、先行き不透明不確実な時代です。歴史、地域、人種、宗教の違いをどう乗り越え真の平和な地球がつくれるか、ホモサピエンス(賢いひと)と命名された我々人間の知性や文化とリーダーの資質が問われています。
近年人間は生成AIや生命科学の発達で何でもできると思い込む傲慢な風潮があります。急速に発達する科学と技術の問題点や倫理性を人間が把握し、支配し制御しつつ、活用しなければなりません。AIはいくら発達しても「いきもの」ではなく、人間の感情や意識は持てません。一方人間は一人では何もできず、他の人やあらゆる他力(たりき)のお蔭で生きられるのです。自然や他の生きものと共に生き、生かされているという謙虚な感覚が大切です。』

                    『若さの持つ最高のものは「未来と可能性」である。』