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2024.02.29理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#222 レジリエンス(強靱性、回復性)・・・強く生きるために

2024.3.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

              

     中学合唱際
 2月4日の中学第2回入学試験が終わり、2月11日の中学入学ガイダンスをへて、24年度の中学新1年生327名(定員320名)が確定しました。ガイダンスでは、校長・中学教頭の話をはじめ各種手続き、主要教科の入学前課題、特別英語授業の説明などが行われました。高校は、公立高校の合格発表後に行う3月のガイダンスで確定します。大学入試も国公立前期選抜試験が終わり、吉報を待つばかりです。私立大学合格の吉報が続いていますが、大切なことは希望通りにいかなかった生徒への支援です。若い生徒が持つ最高のものは、「未来と可能性」です。失敗もよし、回り道やり直しもよし、それぞれ自分の希望する道を目指して欲しいと念願しています。
 2月の大きな行事として、2日間にわたり中学1年生、中学2年生・3年生合同のクラス単位で行う16回目の合唱祭が、コロナ後はじめて保護者参加の下に行われました。各学年の課題曲と自由曲で競うもので、チームワーク、調和、技術等で競われます。学年毎のクラス金賞・銀賞と共に、指揮者賞・伴奏者賞・パート賞等の特別賞もあります。学園に美しい歌声が響き渡った2日間でした。 

 最近気になる言葉で、レジリエンス(resilience、形容詞resilient)という言葉があります。強靱性、弾力性、回復力,復元力を意味します。これは能登半島地震のような地震・災害や事故でのインフラや建築物あるいは情報システムなどに適用される言葉です。電力・運輸・交通・通信・上下水道など公共システム、食料・住居など当たり前の利便性が失われることで、日常の当たり前の平穏さが失われます。強靱性と共に、復旧・回復しやすく、障害を最小限にする適切な保守や整備もレジリエンスの要素です。
 一方レジリエンスという言葉は、我々人間にも適用されます。困難な問題に遭遇しても、ストレスにあっても立ち直ることのできる人は、レジリエントな人です。AIをはじめ技術革新が急速であり、一方仕事もストレスの多い時代です。それを支援し克服するための働き方改革や職場環境、何でも話せる開放的組織が大切です。
 生徒の場合も、勉学をはじめ、友人など種々の人間関係で悩みながらも、レジリエントな人間力をつけて行きます。授業、部活、行事、課外活動などを通じ、困難に負けない自分を目指してほしい。クラスや行事での役割、課外活動を通じて異質な人との交流、リーダーになって板挟みの経験などで生徒は大きく伸びて行きます。また海外研修などで世界の異質な人との出会いや体験を通じて、レジリエンスを高めます。勿論解決できず、深刻なストレスに悩む場合もあります、そのような場合、学園では、何でも相談できるよう、担任、保健養護教諭、カウンセラー(ほっとルーム)が連携し支援する体制を整えています。またレジリエンスを高めるには、自分の得意や好きなことを見つけ、日々達成感を味わい、先生や友人と良い関係を築き、楽しい学園であることが大切です。学園が楽しいという生徒が非常に多いことは、嬉しいことです。
 大人の場合も、複雑な人間関係や仕事の達成、仕事と家庭の両立などに悩み、ストレスに苦しむ場合があります。長い人生経験から、レジリエントな人は、次のような特徴があるように思います。①相談相手や親しい友人がいる。協力関係が築ける。②仕事以外の趣味など発散するものがある。気分転換がうまい。③何とかなるという楽観的思考と良い意味の鈍感性。④自己肯定感、やってみよう精神。達成しているという感覚と明日を思い悩まない。⑤自己中心主義でなく、協調性がある。人にも優しく、利他の精神を持っている。

 以前にも触れましたが、城山三郎「打たれ強く生きる」という本の中の3本の柱の話は参考になります。精神科医から聞いた話として、強く生きるには、インティマシイ、セルフ、アチーブメントの3つの柱が必要であること、柱が3本あれば、1本の柱が折れても、挫折や困難を乗り越えられるということです。
 私の解釈を含め要約します。(文責筆者) 第一の柱はインティマシイ(intimacy)親近性という意味です。親しい人との関係、例えば家族、親しい友人や敬愛する先生、地域の人、自分を支えてくれる人々との関係を大切に親密にすることです。第二の柱は、セルフ(self)即ち自分だけの個の世界を持つことの重要性です。読書、音楽を聴く、絵を見たり描いたりする、一人でできる趣味、思索など個人だけで完結する世界の大切さです。第三の柱は、アチーブメント(achievement)達成という意味で、目標を持つことです。多くは自分の仕事での成果、本当にやりたいこと、生きがいです。事業の達成目標、進学の目標、学びの目標等もあります。3本の柱をバランス良く太く充実させておけば、1本の柱が折れてもあとの2本が支えてくれる。人生では、親しい人との別れは必ずあり、インティマシイの柱が折れることがあります。そのときにセルフの柱、アチーブメントの柱が支えてくれることでしょう。お互いに3本の柱を、充実させ豊かにしたいものです。

『あすのことを思いわずらうな。あすのことは、あす自身が思いわずらうであろう。一日の苦労は、その日一日だけで十分である。』
                              新約聖書「マタイによる福音書」