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2023.11.30理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#219 仕事を通じての幸福・・ヒルティの幸福論

2023.12.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

高2修学旅行(沖縄)
中3年修学旅行(広島)
 11月は高2沖縄(含む石垣島)修学旅行、中3長崎・広島2方面の修学旅行、中2京都宿泊研修がすべて無事終了しました。生徒にとり最も思い出に残る行事です。また恒例の生徒・保護者・担任の個人面談が4日間にわたり行われ、個別の課題等について有意義な対話が行われました。








海外SSH交流
  24年度トビタテ!留学JAPANに応募したい生徒むけに、「トビタテ!留学JAPAN」と「Camp Rising Sun」を利用して海外活動をした生徒12名の発表会が行われました。中3・高1の生徒185名が参加し、海外体験への関心の強さを感じました。またSSHの課題研究の中間発表会が4日間行われました。海外SSH交流校のタイ国プリンセスチュラボーン・サイエンスハイスクール(チョンブリ)の校長・教員・生徒計12名が来校し、授業へ参加、タイの先生の特別授業、生徒同志の研究発表会を行いました。またタイの生徒全員が学園生徒の家庭でホームステイをし、日本の家庭の日常を知り、東京理科大学、日本科学未来館、国立科学博物館の見学・研修、日本文化を知る都内見学を行い、充実した5日間を過ごしてもらいました。当校も6月にタイを訪問しており、国際交流が活発になっています。




同窓会創立80周年
 同窓会設立80周年記念総会・祝賀会(コロナ禍で1年延期)が、約750名の同窓生、法人役員・教職員が集い、盛大に行われました。午前は國枝記念国際ホールで生徒の音楽イベント(オーケストラ、ブラスバンド、チアダンスなど)が行われ、午後は古賀アリーナで、式典・総会が行われ、その後の祝賀会では卒業回期のテーブルを移動しながら、同窓の先輩・後輩、教職員が和やかに交流し、同窓生の演奏もあり、時間の経つのを忘れるほどでした。新制高校3回卒から今年卒業の75回卒までの幅広い世代が集まりました。
式典では、小職より学園概況を説明し、卒業生が各分野で活躍され、同窓の友情をもとに同窓会が活発であることは、学園にとり大きな誇りであることを話しました。また創立者古賀米吉が、卒寿の祝いの席で「私学の道は厳しい。どうかこの学校をつぶさないよう、守ってください。」と挨拶したこと、今後も少子化が進む中、厳しい競争時代に、全国でトップクラスの学園へ発展を続け、創立90周年、100周年、120周年を迎えるべく、卒業生の学園を支える重要さを強調しました。

 さて昨今働き方改革が話題になり、各分野で仕事に関して、働き方の多様性、働く時間、収入、法の順守などを中心に改善が図られています。一方働く意義や仕事の価値、楽しさ・幸福、人生100年時代の生き方も重要です。人は仕事を通じて成長します。あらゆる正しい仕事・職業は、価値あるものですが、教職はその中でも次世代の人づくりで社会への貢献と価値が大きいことはいうまでもありません。近年教職がブラックな仕事といわれ、教員志望が少ないというのは残念で、国家100年の計の大問題です。私立学校は労働基準法に準拠しており、当学園は教員の働きやすさのため、年間個人別変形労働時間制で個人別カレンダーにより自主的時間管理ができ、法人本部による教員支援、ICT支援など事務的支援を強化し、教員の負担軽減に注力してきました。教職員がゆとりをもち仕事を楽しむことが、生徒が楽しい学園の要件です。
幸福論(第一部)
 生徒の将来の生き方、職業、働き方などについて、高1生対象に各分野の卒業生約50人と対話するキャリアセミナーを同窓会と共同で毎年行ってきました。仕事は、第一に報酬を得て自立すること、第二に自分の本当に好きな天職を見つけること、仕事を通じて成長すること、第三にそれにより社会貢献することの3つをあげ、それらを通じて幸福になることを話してきました。
 仕事、成功、幸福、生き方については、理論、事例、人物論、ノウハウを含め莫大な数の図書が発刊されています。知的な仕事と幸福についての古典として、カール・ヒルティ(1833-1909)が130年以上前に書いた「幸福論」が参考になります。アラン(仏)、ラッセル(英)と並ぶ3大幸福論の一つです。
著者は1833年スイス生れで、政治家・哲学者・法学者・文筆家です。幸福論(第1部)は、仕事の上手な仕方、良い習慣、時間の作り方、幸福、エピクテトスなど8章からなります。「仕事の上手な仕方」の中で、人を幸福にするのは、仕事の種類ではなく創造と成功の喜びであること、仕事に没頭できる喜びが大切としています。仕事にもあらゆる技術と同じくコツがあるとし、①仕事への勤勉さと人類・社会貢献の大切さ ②まずやり始める習慣をつけること ③創造的仕事は本論から始めること ④元気と感興がなくなったら休息すること ⑤無益な活動に力を費やさないこと ⑥繰り返しやり直す重要さ などを述べています。また「時間の作り方」では、①規則正しく働くこと ②1日の時間をどう区分するか(タイムマネージメント) ③準備に時間をかけずすぐやること ④小さな時間の断片の活用(細切れの短時間の活用) ⑤時には仕事の対象を変えること(いくつかの仕事の並行処理)
昔も今も仕事のやり方の本質は変わらないものです。

 今イスラエル対イスラム主義組織ハマス、ウクライナ対ロシアの戦争をはじめ世界各地での紛争と分断が続いています。非常に不透明不確実な時代です。更に経済、環境、貧困、格差など日本も世界も課題山積です。何よりも平和が大切で、当たり前の日常、平凡な日々がいかに貴重かと改めて考えさせられます。TVの悲惨な画像を見、一日も早い平和を願う日々です。今こそホモ・サピエンス(知恵ある人)である人間の真の賢さが求められています。

『静かな眼 平和な心 その外に何の宝が世にあらう。』(三好達治;冬の日)