2023.07.31理事長メッセージ
理事長からのなずなメッセージ#215 希望と挑戦のための環境づくりと支援
2023.8.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一
7月22日より8月31日まで40日間の夏休みにはいりました。すでに7月に2泊3日の中1夏期学校(富士山、西湖周辺)、夏期講習、部活の合宿、SSHタイ交流校との研究・研修、ボストン・ダートマス大学国際研修,多くの国内外の課外活動、なずな祭の準備活動などが始まっています。19年の夏以来4年ぶりに活発な夏休みです。 一方温暖化・異常気象の中、新型コロナ感染症の漸増、その他の感染症、熱中症もあり、病気や怪我、事故に対しては、十分な注意が必要です。生徒と教職員の『安全は全てに優先』します。時に勇気ある中断・中止の判断もあります。夏休みには、普段できないこと、自然や人との対面活動などリアル体験をし、新しい出会いを通じて、大きく成長して欲しいと念願しています。 WSC(英語での教養を競う大会)世界大会(5地域で行なわれる)の韓国ソウル大会に、ジュニア(中学生)12名、シニア(高校生)6名計18名6チーム(3名/チーム)が参加しました。密度の濃い競技(ディベート、ライティング、テストなど)と多くの楽しいイベントに参加し、20ヶ国以上の他国の生徒と交流し、結果本校生徒全員が最終の米国イエール大学でのチャンピオン大会の出場権を獲得しました。 また23年度の第1回HKなずな奨学金「国内外チャレンジ奨学金」を受ける15名(男子7名女子8名)の授与式が行われました。内訳は短期留学13名、特色ある活動1名、卓抜な能力・意欲活動1名でした。活動は、今回全て海外で、米国5名、英国2名、豪州、オーストリア、フィンランド、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、タンザニア各1名と多岐にわたります。 授与式での小職挨拶要旨は以下の通りです。 「この奨学金は、昨年11月から始まり、今日は23年度第1回の授与式です。寄付者は皆さんの大先輩であり、その熱い思いは、皆さんがグローバルに活躍して欲しいこと、また夢と意欲を持って新しいことや特色ある活動にチャレンジしてほしいことです。この熱い思いに応えるべく、奨学金を有効に使い、積極的に活動してください。 最近国内外共に不安定・不透明な時代といわれ、若い人が安定志向、安全志向であると言われています。皆さんは現状維持でなく、新しいことにチャレンジし、道を切り開くリーダーになってほしい。その中で自分の目標を達成すると共に、人に役立つ利他の精神、他人のために役立つことが大切です。自利とは利他をいう、情けは人の為ならず、他人のため尽くすことは必ず自分に返ってきます。今回の活動が、皆さんの長い人生の節目となることを期待しています。寄付者のメッセージは『小さな努力の継続で世界に羽ばたけ』です。」 さて本年6月(独法)「国立青少年教育振興機構」による「高校生の進路と職業意識に関する調査報告書・・日本・米国・中国・韓国の比較」が公表されました。令和4年9月~令和5年2月に高校生対象に調査されたものです。日本の高校生の主な特徴の要旨は、以下の通りです。(調査概要を更に要約) ① 進路活動への関心が高く、学習しているが、実体験が少ない 「職業の種類や内容」「進路選択の方法」を「学習したことがある」と回答した割合が8割強で、米中韓を大きく上回っている。また、「職場の見学」「就業体験」に「関心がある」と回答した割 合が6割以上と高いが、それらに「取組をしている」と回答した割合は、いずれも約1割と低く、米 中韓の2割以上と比べて最も低い。 ②「仕事」「働くこと」は「生活のため」「社会人としての義務」が強い 「仕事」「働くこと」に対し、「生活のため」「社会人としての義務」という割合が米中韓に比べ著しく高く、「楽しい」という割合が最も低い。 ③ 職業選びでは、「環境」「安定性」「興味や好み」を重視 職業選択にあたって、「仕事の環境」「安定性」「自分の興味や好みに合っている」が「とても重要」と回答した割合が4か国の中で最も高い。また、10 年前と比較して、日本の高校生は「収入」「仕事の環境」「勤務先の福利厚生」が「とても重要」と回答した割合が高くなっている。 ④「のんびり暮らしたい」「自分の趣味や自由時間を大切に」の割合が上昇 「暮らしていける収入があればのんびりと暮らしていきたい」について、「とてもそう思う」と回答した割合が5割弱で、4か国中最も高い。反対に、「できるだけ高い地位に就きたい」「自分の会社や店を作りたい」「望む仕事につけなくても、がまんして働くべきだ」は、米中韓に比べて著しく低い。また、10年前と比較し、「暮らしていける収入があればのんびりと暮らしていきたい」「仕事よりも、自分の趣味や自由な時間を大切にしたい」と考えている割合が高くなり、「望む仕事につけなくても、がまんして働くべきだ」は大きく低下している。 ⑤ 今の生活に満足しているが、将来への不安が強い 「いまの生活には満足している」と回答した割合は84%に達し、4か国中最も高い。一方、「自分の将来に不安を感じている」と回答した割合は8割弱で、米中韓より高くなっている。また、2014年、2018 年、2021 年の3回の調査に比べて、割合が年々高くなっている。 調査概要のURLを下記に示します。 http://www.niye.go.jp/kanri/upload/editor/165/File/gaiyou.pdf 調査から、総じて日本の高校生の現状満足、安定志向、生活重視、将来への不安、チャレンジ志向が低い、起業精神・上昇志向が低い等が顕著です。将に、大人は若者が希望をもてる環境、チャレンジできる環境や仕組みをつくる責務があります。更にリーダーや挑戦者の育成などの努力を、政治、経済、教育、文化など各分野で加速すべきことを痛感する日々です。