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2021.12.01理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#195 演劇(Drama)のある文化祭・・・新しいなずな祭にむけて

21.12.1.
市川学園理事長・学園長 古賀正一


感染数が激減し、ワクチン接種も進み、第6波にむけ3回接種がスタートします。これから年末、3学期の行事が予定通り行えることを念願しています。

さてコロナ禍で昨年なずな祭(文化祭)が実施できない中、学園行事としての文化祭の改革提案が教職員及び生徒の中からあり、「新なずな祭」の企画が進められました。そのコンセプトは、生徒の自主性を重んじた「生徒の、生徒による、生徒のための」文化祭でありたいという思いとクラス参加のより活性化をはかり、保護者や一般客にたいしても、学園の魅力を伝える更に質の高い楽しめる文化祭をめざそうということでした。
文化祭実行委員会とともに、演劇祭実行委員会がつくられ、コロナ禍で予定より1ヶ月遅れの11月5日、6日に実施しました。緊急事態宣言解除後ではありましたが、熟慮の末、残念ながら保護者及び一般客はお招きせず、学内実施としました。しかし生徒の達成感と満足感のある新しいなずな祭となり、今回の経験を生かし、来年度には更に大きく開花することを期待しています。

新なずな祭は、新しく生徒全員(中1~高2全員)が参加する前日(11月4日)の開会式、開会式での全クラスの短時間PR発表、同じく最終日の全員参加の閉会式、閉会式でのなずな大賞などの表彰、中3全クラス参加の演劇祭、見やすく持ちやすい折り畳み式パンフレット、更に参加のクラスや部活単位の企画書の充実でした。

演劇祭の計画は、昨年東大演劇サークルの学生と中3教職員の出会いが始まりでした。その後、東大学生の熱意あるサポートのもと、演劇を教育に生かすための実践としてのなずな祭、生徒の自立・協働性を高める生徒主体の準備と支援、生徒の演劇祭実行委員会の設置と役割(マネジメント部、広報部、公演部、各クラス責任者)の学び、委員会運営のワークショップ、見本公演と実際のクラス演劇の学びのワークショップ、その他多くのワークショップを実施してきました。
演劇を自分たちで計画し、脚本、演出や役者分担、スタッフによる舞台づくりなど役割分担を決め、その間の練習、学びと失敗を通じて一つの演劇をつくりあげる苦労と喜びを感じ、クラス仲間の協働の大切さを学んだと思います。生徒の自立性が高まり、人間力が向上したことは確実です。

最初の打合せから1年以上、演劇祭実行委員会ができてから8ヶ月、更にクラス単位で半年かけてなずな祭当日まで、それぞれの演劇の準備・練習を行いました。その成果を本番2日間に、各クラスともに4回~6回(1回約1時間)の公演をこなしました。中3生徒は勿論のこと、鑑賞した他学年の生徒や教職員も大きな満足感がありました。
演目は、例えば「賢治エチュード」、「名探偵の掟」、「男女逆転!?シンデレラ」など各クラスとも異なります。演劇祭プログラムに書かれた教員と生徒のメッセージを要約し引用します。

「演劇をつくることを通じて、沢山の価値観のぶつかり合いやすりあわせが起き、色々な苦労があったかも知れません。各クラスが自分たちの作品を作り上げようと諦めずにここまでやってきたこと、それはプロの作品より荒削りだからこそ、感動を与えることが出来ると思います。」(中学3年副主任の山田教諭)

「4月から初挑戦になる演劇づくりに取り組んできました。舞台装置を作るのも、音響や照明機材に触れるのも初の試みでした。緊張と不安の中完成した舞台は、大きな感動を呼び起こすことでしょう。公演の回ごとに違うのも魅力の一つです。演劇は中3学年のテーマである《多様性への寛容》を体現しています。クラス色が溢れる素敵な舞台を楽しんで下さい。」(演劇祭実行委員長)

尚なずな祭とは別に、中学2年生は2学期から国語の時間を使い演劇を学んでいます。創作演劇脚本をもとに、学内の6ヶ所を舞台として設営し、2クラスずつ役者として劇を演じつつ、観客として仲間の演劇を鑑賞することも学んでいます。

さて今、文科省が掲げる学力の3要素は、「①知識・技能」「②思考力・判断力・表現力」「③主体性・多様性・協働性」を基本としていますが、演劇は特に表現力及び主体性・多様性・協働性のための学びとして好適であり、海外では、初等・中等教育に正規の教科科目として演劇(Drama)がある国が多数あります。
小職も15年前フィンランドの小・中学校視察の折に、Dramaの授業を見て感動したことを覚えています。その学校の女性の校長先生は、教育方針として、自分で考える、生命を大切にする、違った人を許容する、創造性と目標を持つことをあげ、小学校1年生から4年生は自己表現を重視し、5年・6年では実際にドラマを学び実践しているとのことでした。

最後に、劇作家・演出家であり兵庫県立芸術文化観光専門職大学(豊岡市)の学長である平田オリザ氏は、これからの教育の中で、グループワークを重視した演劇教育の重要性を主唱し、自ら実践されています。兵庫県豊岡市では演劇・文化・観光教育を行う掲記大学と、世界から多くのアーティストを招く豊岡演劇祭を両輪として地方を活性化することをねらっており、また市内全小中学校では演劇を用いたコミュニケーション教育を導入しています。平田オリザ学長は、観光文化都市として豊岡市を発展させること、昨年第一回開催のの豊岡演劇祭を世界有数の演劇祭にすることを目指し尽力されています。