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2012.09.01理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#83 誰もが好きになる理科教育をめざすこと

理事長・学園長
古 賀 正 一

 9月1日、約40日間のそれぞれの夏期休暇を過ごし、待ちかねたように真っ黒に日焼けした生徒たちが登校してくる姿を見るのは嬉しい限りです。各自 夏期講習、多彩な夏期行事、クラブ活動、インターハイなどの各種大会への参加、合宿、家族との行事などそれぞれ意義ある生活を過ごし、大きく成長していると思います。一方では生活習慣や生活リズムをもとに戻すようスイッチを切り替える必要があります。

この夏期休暇中、全国レベルの大会で活躍または出場決定したのは、中学では、囲碁、放送コンテスト、応援部(チアダンス)など、高校では女子水泳200m/400m個人メドレー、女子陸上個人200m、卓球部個人、書道部個人、化学部、ハンドボール部、応援部、鉄道研究会などでした。特に高校1年女子樋口恵夢さんは、インターハイ女子水泳200m個人メドレーで圧倒的強さを示し、2分12秒00の高校新記録で優勝し、千葉県森田知事からも祝福されました。

また中学3年語学研修では、カナダに加え、新しく英国ケンブリッジ大学ピーターハウスカレッジ(1284年創立の最古のカレッジ)での研修が加わり、更に充実したものになりました。ノーベル賞受賞者を多く輩出したキャベンディッシュ研究所の視察や教授・大学院生の直接指導は生徒諸君に強いインパクトを与えたと確信しています。

さて自然現象や生き物の不思議さに驚き疑問をいだくのは、人間固有のものです。科学の発達や発明は、驚きと疑問から始まっています。当学園SSH(文科省指定スーパー・サイエンス・ハイスクール)では夏期休暇中多くの活動がありましたが、地域交流の一環として、地域の小学生200名以上に対し、高校生の課題研究・実験の公開発表会を実施しました。小学生が熱心に説明を聞き、自分で実験し、積極的に質問している姿は感動的でした。高校生は如何に分かりやすく説明するかの難しさを体験しました。本当に自分が理解していないと、正確な説明は出来ないものです。(「人は教えつつ学ぶものである」・・セネカ)

ところで小学6年生と中学3年生を対象に4月に実施した全国学力・学習調査の結果が8月公表されました。私学も一部参加していますが、大半は公立です(学園は参加していません)。今回から国語・算数・数学以外に理科が加わりました。理科のアンケートで、『理科の勉強は好きか』の問いに対し、肯定回答が小学生82%・中学生65%で、何れも国語・算数・数学より高い値です。しかし数値は中学の3年間で減少しています。『理科の授業が良く分かる』の回答が小学生86%に対し、中学生65%と減少しておりこれも問題です。

生徒の興味を引く分かる授業、自分で観察・実験する楽しさなど授業にも工夫が必要です。学園では、夏期休暇中 中学3年生の英語サイエンス講座があり、実験考察したことを英語でプレゼンテーションするやり方を学びました。中学で理科の基礎知識がないと、高校で更に理科嫌いになり、安易に進路を文科系に決めることがあります。

また今回の理科のテストでは、身近な現象の観察・実験の結果を整理分析し説明する力、実生活に理科の知識を応用する力が不足しているなどの分析結果がでています。また『将来理科や科学技術に関係する職業に就きたいと思う』と応えた小学生は29%、中学生は24%で、科学技術立国日本の若者の職業観は深刻です。

今や理科系の職業につこうが、文科系の仕事につこうが、理数の基礎知識や論理的思考力は必須です。また地震・災害・エネルギー・環境・医療など生活面でも理科の基礎知識なしでは、合理的判断が出来ない時代です。入試科目に特化し、主要教科の一部を捨ててしまうような勉強の仕方は将来に禍根を残します。文理の基礎知識・教養は中学・高校でこそ習得でき、そのうえで人に負けない専門を持ち、深く厚く学ぶことが大切です。

学問、科学技術も新しい分野が創出されています。文科系でも理数の知識が、理科系でも経済・法律・倫理・歴史・文化などの教養が必須な文理融合時代です。習った知識だけでは処理できないことも多くなります。変化に対応するには、自ら学び自分の頭で考える力と旺盛なチャレンジ精神を持つ事が、若者に期待されます。

学園では、生徒諸君一人一人がその意味でも、自分で意欲的に学び続ける第三教育の達人をめざして欲しいと念願しています。