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2021.08.02理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#191 リアルの体験の大切さと危険察知能力・・・幼稚園の園庭改革に学ぶ

       2021.8.2
 市川学園理事長・学園長 古賀正一

東京都をはじめ首都圏の千葉県、神奈川県、埼玉県に、8月31日まで緊急事態宣言が発令され、五輪開催の今も感染拡大が続いています。一層の危機感の共有と感染防止対策の実践が重要です。
学園は、7月16日放送での終業式を行い46日間の長い夏休みに入りました。生徒がこの長い休みの期間、それぞれ自主的に使える自由な時間を有効に使い成長することを念願しています。昨年は8月6日が終業式で丁度3週間遅かったことに比べ、今年はコロナ禍での制約はありましたが、授業を含む1学期の学習活動は予定通り終了しました。

夏休みに入り、部活、4タームの夏期講習、自習室学習(高3生は休日も可)、対外交流イベント(主としてネット)など、活発に活動しています。
海外に行けない国際研修もグローバルイシュー探究講座(神田外語大と連携)や恒例のエンパワーメントプログラムなどを実施し、例年以上の参加希望者が出ています。
生徒が主体となるなずな祭(文化祭)の改革が推進される中、中3が各クラスで実施する演劇祭をはじめ、各学年のクラス単位での企画が活性化し、その準備が行われています。(残念ながら今年は保護者の皆さんの限定参加のみで、一般公開はありません)
理科分野もSSHの各種の発表会にネットを含み参加しています。生徒の校外の自主参加イベントも多く、一例として東大や千葉大主催のグローバルサイエンスキャンパスにも多数参加し、講義と共に課題研究の準備をしています。またJAXAの高校生向けオンラインイベント(調布エアロスペーススクール)にも参加しています。
部活では囲碁将棋部の中1生徒が「第46回 中学生将棋名人戦」でベスト8の成績を収める等の朗報が届いています。さらに本校卒業生 吉野 樹君(2013年卒・トヨタ車体 BRAVE KINGS 所属)が東京オリンピック男子ハンドボール代表として活躍しています。
このように夏休みは、生徒にとり自分の興味や関心に従い活動するまたとない機会です。一方生徒及び教職員の『健康、安全、安心は全てに優先』します。事故、怪我、熱中症、感染クラスターなどに十分注意を払い、必要により中断・中止など勇気ある撤退も必要です。ことが起きた時は、現場での冷静スピーディな判断・処置、特に初動が大切です。保護者との連絡対応、適切な報告・連絡・相談、関係部門との連携など、危機管理は「感度とスピードおよび想像力」が重要です。

コロナ禍で、教育においてもZOOM等ネット活用の授業や集会の威力を実感しましたが、逆に自然に触れる、教師と直接対話する、生徒同志協働する、現物にふれ実験する、感性を高める、真の良き友情を深めるなどリアル体験の大切さをあらためて思います。
特に幼児教育は、自然とのふれあい、実物や現実などリアルの環境での体験が不可欠です。何故だろうという疑問、不思議だと思う気持ちをもち、失敗も体験し、自分でやってみようという意欲と主体性、友達との協働性を育むことが益々大切です。中等教育でも大切な非認知能力(IQなど数値化出来る認知能力に対し、数値化しにくい意欲・関心、粘り強さ・忍耐力、挑戦精神、協調性、自制心、感謝など)が、近年幼児教育では非常に重視されています。

学園は中学高等学校以外に3つの幼稚園を経営しています。市川学園幼稚園(市川市八幡5丁目、定員180名)、市川学園第二幼稚園(市川市東菅野4丁目、定員90名)、市川学園西の原幼稚園(印西市西の原3丁目、定員180名)です。

市川学園幼稚園kd7 市川学園第二幼稚園kg8  市川学園西の原幼稚園kd9

西の原幼稚園は、広い敷地を持ち環境に恵まれた幼稚園です。しかし園庭は、運動場の域を出ず、鉄製の運動具も多くまた園児を怪我から守るため、多くの禁止事項がありました。園長は、子供がのびのびと育つ園庭をつくりたいと願い、園庭づくりの「野育の会(NPO法人園庭・園外での野育を推進する会)」の存在を知り、園庭改造・手造り園庭の指導に当たる先生方と出会い、園庭造りを通じての新しい教育を学びました。幼稚園を進化させたい園長・教職員の熱意と保護者の協力によるプロジェクトが3年前にスタートしました。
当初園庭改造は、一定期間で完結するものと考えていましたが、毎年教員・保護者有志・園児の体験での手造り進化のプロセスが重要であることを知り、「やってみよう精神」のもと推進してきました。
鉄製遊具を全て撤去し、固い起伏のない園庭に新しく砂を入れ、手造りの木製遊具を年々ふやしました。1年目は築山、2段砂場、起伏のある園庭など、2年目は大小のステージ、砂場の屋根、タワー、ウッドデッキ、ブランコ、一本橋など、3年目は遊具の改善保守、既存遊具の連結、畑作り、植物・野菜の栽培、昆虫育生などを実践しました。

3年間で園児の遊びが自然と関わりつつ多様化し、自ら工夫し助け合い、体幹能力が向上し、足腰も強くなり、怪我の発生率が大幅に減り、幼児の非認知能力・危険察知能力が増大しました。年々保護者の理解、支援も深まり、園庭づくりの参加者も増え、着実に成果が出ています。教職員の考えにも、教えるだけでなく見守ることの大切さへの変化が感じられます。手造り園庭は、西の原幼稚園の幼児教育の特色として、日々新たに取り組んでいます。コロナ感染拡大の中でも、感染症予防対策を的確に行い、ネットの遠隔活動を利用しつつ、一方生徒も園児も自然や現物に触れるリアル体験の幅を広げる工夫が極めて大切です。

『人間とは、ホモ・サピエンス(考える人;スウェーデンの生物学者リンネ)であり、ホモ・ファーベル(道具をつくる人;仏の哲学者ベルグソン)であり、ホモ・ルーデンス(遊ぶ人;オランダの歴史家ホイジンガ)である。』

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