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2024.04.30理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#224 不確実時代こそ第三教育の達人をめざそう

2024.5.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

 早くも24年度がスタートし、1ヶ月が経過しました。学園は毎年同じように見えても、新入生を迎え、生徒は学年・クラスが変わり、教職員も校務分掌が変わり、みな初心にかえります。また新任の教職員を迎え、多数のやるべきことがあり、4月は多忙で密度の濃い1ヶ月です。
 4月1日から2日間の新任教員研修、学年会・教科会・部会毎の打合せ、更に理事長・校長以下27部門の24年度方針発表会(PDCAのP)と続き、6日に始業式、8日に入学式が行われました。更に中学の春期セミナー、高校のオリエンテーションが行われ、その後逐次授業が開始されました。また各学年の保護者会、新入生へのクラブ紹介、生徒の健康診断、外部講師による高1年生向け特別ゼミのグローバル講座(講義と課題研究発表)が行われました。
 新入生へのメッセージは、やはり当学園の建学の精神であり、その中でも、第三教育が重要です。あらためて中学入学式の挨拶で話したことの一部を敷衍して記します。
 本学園は1937年4月15日、今から87年前、旧制市川中学校(男子5年制)として開校しました。創立者古賀米吉を含め教職員5名と生徒32名の苦難のスタートでした。英国イートン校などパブリックスクールの自由と規律、紳士の精神を模範とし、品格あるリーダーを育成しようという高い志でした。創立以来4万人以上の卒業生を輩出し、多くの分野で活躍しています。
  建学の精神は、第一に人間は一人一人皆違うオンリーワンの存在であるという「人間観」、これは現代の多様性重視に通じるものです。第二に生徒一人ひとりの特色をよく見て、伸ばそうという「なずな教育」です。これは現代の個別の教育です。なずなは春の七草の一つ、目立たないがきれいな白い花です。大輪の菊や満開の桜は勿論きれいですが、なずなのような小さな花の美しさも特色があり、人間も一人一人違った特色を持っており、よく見る教育として、本学園ではなずな教育、なずな精神といっています。芭蕉の「よく見ればなずな花咲く垣根かな」の句を、創立者が教育の神髄として、人間を花にたとえたものです。第三に生徒が自ら考え学び生涯学び続ける「第三教育」です。第三教育は、家庭での第一教育、学校での第二教育と並行して行われ、自分で学び考える自分自身による教育で、いわば教育の王道です。現代の能動的学習や学び直し教育(リカレント教育)、リスキリングは実は第三教育の一部です。これから人間は先端の生成AIやICTという知の道具を使いこなし、常に新しいことを学び、人間にしか出来ない判断力、創造力、感動する心、思いやりなどが大切になります。また科学技術が急速に進歩し、国内外の政治・経済が共に不安定・不確実な時代こそまさに第三教育が不可欠なのです。
 その上で3つのことをお願いしたい。 第一は、まずは楽しい学園生活をおくってください。楽しい学園生活とは何か?授業は勿論、行事やクラブ活動・課外活動に積極的に参加し楽しむことです。多くの友達と友情を深めてください。皆さんが自主的に選べるメニュが沢山あります。土曜講座や多くのゼミ・特別講座、なずな祭などの行事、成果を発表するアカデミックデイ、学年単位の集会やイベントなど積極的に参加してください。クラブ活動は、他のクラス、先輩と交流できる絶好の機会です。また学外のイベントに参加し他校生と他流試合をすることも大切です。大事なことは、「何でも見てみよう、やってみよう」という前向きな心です。やってみて、新しいことを発見し、毎日自分が進歩向上していることを実感することが、楽しい学園となる基本です。
 第二に、第三教育の優等生、更に達人をめざしてください。そのためには一にも二にも読書です。本学園では、図書館を第三教育センターと命名し、知の拠点として、学園の一番良い場所に快適な空間を用意しています。朝7時から開館し、12万冊の本が皆さんを待っています。学園推薦の「100冊の本」、自然科学、人文・社会科学に関する初心者向けの本から専門書まで各段階の本、岩波文庫全巻など多数の文庫本、多くの英語書籍、電子書籍など多彩です。テーマ毎の展示や図書館での国語や社会の授業もあります。読書は時間的にも空間的にも体験できないことが学べます。フランスの哲学者、数学者・科学者でもあったルネ・デカルトは、その著「方法序説」で、「良き書物を読むことは、過去の最も優れた人々と会話を交わすようなものである」と述べています。一日に何時間かは、スマホを遠くに置いて、活字の本を読む、体を動かす、ご家族との時間を過ごすリアルの世界で過ごすことが、皆さんの大切な脳のためにもが極めて重要です。
 第三に、人間としての基本のマナーを身につけ、立派な教養ある人間、将来の紳士淑女を目指すことです。きちんと挨拶をする。挨拶はコミュニケーションの基本です。またルールや約束を守る、人に迷惑をかけない、感謝の気持ちを持つ、人に親切にするなどごく当たり前なことの実行が大切です。
市川学園という舞台の主役は皆さんです。皆さんがそれぞれ存分に学園生活を楽しみつつ第三教育の優等生から達人を目指して下さい。

                           『われ以外皆わが師』(吉川英治)