NEWS新着情報

2023.12.31理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#220 ・・自由と規律、権利と責任

2024.1.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

 新年おめでとうございます。旧年は世界も日本も多事多難な1年でした。その中で平和で平穏な日々、当たり前の日常を過ごせたことに、感謝せざるを得ません。新年こそ世界の紛争・戦争が一歩でも平和に近づき、戦火に苦しむ多くの人々の救済、難民問題、貧困、地球温暖化、急速に進化するAI等科学技術の制御・抑制など世界共通の課題の解決が前進することを願っています。
 我々人間は、宇宙の中の地球という小さな惑星の一員であり、ホモ・サピエンスの名にふさわしい賢い行動が必要です。世界および我が国の真のリーダーの英知と輩出を願っています。1932年A・アインシュタインとS・フロイトの書簡である「ひとはなぜ戦争をするのか」(講談社学術文庫)は、人間の本性である攻撃欲動と他者への共感力・欲動抑制、更には知性と文化力の重要性を語っており、この時期に一読の価値がある一冊です。



 
 旧年12月は、毎年の如く学園活動も極めて早い流れでした。学期末試験が終わり、高校3年生は、大学入学共通テストおよび2次試験に向け頑張っています。学期末試験最終日(12月14日)には、高3生の激励会が開かれ、國枝記念国際ホールで、小職、及川校長、吉田学年主任が話し、更に学年の担任・副担任合計23名が、心を込めた短い激励のことばを述べしました。それぞれ特色ある激励でしたが、共通点は「生徒の皆さんが大好きで最後まで支援する」という決意と愛情に満ちたものでした。小職からは、概略次の話で激励しました。「吉田学年は、学年スローガンのムーンショット、ファーストペンギンを目指し高い目標にチャレンジする素晴らしいチームです。自信を持とう。全ての選抜試験は僅差、僅かな点数5点10点の差で合否が決まります。最後まで目標を諦めず、よく食べ、よく寝て元気にベストコンディションで臨んで欲しい。一方人生100年時代故に、本当に自分のやりたい第一の希望、我が道をめざして欲しい。必ず達成できます。まわり道よし、やり直しよしです。健闘を心から祈ります。」

 HKなずな奨学金は、今年度後期の授与式が、寄付者出席のもと行われ、海外大学進学奨学金予定者1名、国内外チャレンジ活動奨学金8名に奨学金が授与されました。本奨学金制度発足の昨年度および23年度あわせ、2年間で、海外大学進学奨学金2名、国内外チャレンジ活動奨学金36名計38名の授与者となりました。各自が目標に向かい、大きく羽ばたいて欲しいと思います。

 近年は、政治も企業も社会も人への投資を重視しています。人口減少が確実な中、人材育成は数だけでなく質の大切さ、また日本の教育システムの優位性が重要になります。広い意味での教育への投資が重視されていることは喜ばしいことです。個々の課題への対応以外に、教育・人材開発の国家百年の計であるビジョンと総合的長期計画が必要です。
 憲法の基本的人権の尊重、多様性重視、個の活性化、WHO憲章の健康(肉体的、精神的、社会的に健全であるウェルビーイング)が、これほど重視される時代は、過去にはありません。個人の自由と権利を守る自由民主主義の国に生まれた幸せは、専制独裁主義の国と比較してみれば、良く分かります。
 しかしこの自由と権利を守り維持していくには、放漫な自由ではなくルールを守り法を遵守する規律が重要であり、自分の権利の主張だけでなく、義務と責任を果たすことが必要です。個人も組織も行き過ぎた自由、行き過ぎた権利主張があります。過度な自由競争を促す新自由主義的発想やSNS時代に自己の権利だけを主張し他人の迷惑を考えない風潮もあります。組織では、全ての利害関係者(ステークホルダー)のことを考える日本のよき伝統の「三方よし」の精神が大切です。個人では自分のやりたいことを追求できる自由と共に、人に迷惑をかけないための適切な抑制が大切であり、また自身の責任と義務を果たす努力が必要です。

 学校特に私立学校は、各種の法律を遵守しつつ、建学の精神のもとそれぞれ独自の特色ある教育を実践しています。某大学のような組織や個人の不祥事が起きるとガバナンスとして法律や規制を厳格化する傾向になります。自由を獲得するには、法令遵守など規律をしっかり守る、権利を主張するには、義務と責任をしっかり果たすことが私学にも問われています。一方生徒・学生に対しては、自主性と主体性を高めると共に、義務と責任を果たすことを問わねばなりません。
 本学園は、生徒の自主性・主体性を重んじ校則やルールを少なくするために、生徒が自分を律すること、規則を守ること、人間としてのマナーやモラルを自分で考え実践することを前提としています。ご家庭の協力が必要です。本校の方針の一つ「紳士淑女たれ!」は、紳士(Gentleman)の語源の教養がありマナーや振る舞いの立派な人物を意味しています。当たり前ですが、他人に親切にする、迷惑をかけない、規則やルールは守る、身だしなみをきちんとする、約束・時間・期限を守る等です。学園は自由で闊達な風土がモットーですが、決して放漫であってはならず、「自由には規律を、権利には責任と義務が伴う」ことを認識してもらう人間教育に尽力しています。これは生徒だけでなく、我々教職員が自ら率先実践し、身をもって生徒に範を示すものです。

 新しい年が平和で、皆様に取り幸せな1年になることを祈念いたします。

「国があなたのために何をしてくれるのかを問うのではなく、あなたが国のために何を成すことができるのかを問うて欲しい。」 ジョン・F・ケネディ