NEWS新着情報

2023.08.31理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#216 リアルな活動時間の価値が高まる

2023.9.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

三宅島研修
 夏休み40日間を終え、始業式を迎えました。地球が沸騰すると表現されるほどの酷暑の中、健康管理に留意しつつ、学校行事、夏期講習、部活動・合宿、生徒個人の諸活動などが積極的に行われました。40日間生徒それぞれの生活・活動を通じて、一人一人が大きく成長したことを期待しています。また大きな事故もなく、「無事」こそが有難く貴いことです。
  8月は、国際教育活動としてボストン・ダートマスカレッジ研修に加え、新しくシンガポール国際研修がスタートしました。また国内での国際教育として神田外語大学・市川学園共催のグローバル・イシュー探究講座(ブリティシュヒルズ合宿を含む)、市川学園・鴎友学園共催のダブルヒリックス国際セミナー(英国・スペインより来日の6人の講師によるアクティブな集中ゼミ、私立高校6校の生徒46名の参加と交流)、ISAによるグローバルスタディズプログラムなどが活発に行われました。またSSHの三宅島研修、恒例の白神山地研修も実施しました。更に中学・高校受験生向けの説明会・スクール・ツアーなど広報活動も非常に活発に行い、本学園の教育方針・特色の紹介と理解に努めました。また始業式で部活動の各大会で活躍した個人・団体を校長より紹介しました。(かるた同好会、中学女子硬式テニス部、中学卓球部、鉄道研究部、応援部、中学陸上部、囲碁将棋部、SSH関係)
白神山地研修
さて最近はAIや生成AIという言葉がニュース、新聞、雑誌で話題にならない日はないと思います。大切な事は、AIも他の先端科学・技術と同様に人間自身が開発したもので、光と共に影もあることです。AI、生命科学、原子力、医療、自動化技術等の先端科学・技術は勿論、既存の科学・技術も含め、賢く使うこと、研究・開発や利用について、人間が正しくコントロールし、必要により規制をすることです。
AIはあくまでも道具、知的な機械、相談するロボットであり、生きもの(生命体)ではない。従って人間と異なり自我や人格はなく、意識や感情もないことを銘記しつつ、適切に活用すべきものです。
  6月に土曜講座で中村桂子JT生命誌研究館名誉館長から「科学はこのままでいいのかな・・・一人一人が生き生き暮らす社会に向けて」と題して講演いただきました。生命科学につきDNAからゲノムの登場まで語られ、人間は自然の中の一部であり進化してきた生きもののひとつであり、他の生きものと共に生き生かされていることを話し、人間は上からの目線でなく中からの目線で広い視点をもつこと、他の生きものとのつながり、人と人とのつながりの大切さを強調されました。生産性、経済重視の「進歩」でなく、生きものとしての多様性、過程などを重視した「進化」が大切と力説され、生徒に深い感銘を与えました。
  一方、自然や人や生きものや実物と接する時間、即ちリアルの時間が、昨今少なくなっていると感じます。リアルの時間を多く持つ工夫が必要です。今1日の時間をリアルの時間(自然、対面、現場・現物・現実、家族との団らんなど)とデジタルの時間(インターネット、スマホ、ゲーム、TV、仮想空間など)とに分けると、デジタルに費やす時間が多く、リアルの時間がどんどん少なくなっているのではないか。これからの価値ある生き方とは、人間でなくともできる仕事はデジタルを活用し効率をあげつつ、リアルの時間を多く生み出し豊かな時間をつくり楽しむ工夫が、豊かさの大きな要素になると思います。勿論生み出されたリアルの時間をいかに活用し過ごすかは、一人一人の生き方の問題です。
  教育も各種伝達、情報管理・情報分析、授業・学習、遠隔教育・遠隔学習、デジタル教材、デジタル採点などデジタル技術を日々上手に活用しつつ、対面、対話、思考、協働のリアルの時間を多く持つことが、生徒の思考力・判断力・表現力を高め、主体的・協働的・深い学びにつながる質の高い教育になるでしょう。
  この夏休みは生徒が各々の主体的活動を通じ、多くのリアルの時間をもち、リアルの新しい体験をし、感動し、成長を実感できた機会であったと思います。
  一般的にこれからの仕事で大切なことは、上流(最初)の創造性、工夫、考える、判断、計画の段階と、下流(最終)の対面、対話、心配り、丁寧さなど人間性が問われる行動の段階は人間が行い、中間の仕事の多くはAI、ICTで効率をあげ、仕事全体の生産性と質を向上させることが大切だと思います。AI、ICTはあくまでも非常に有効な知的な道具であり、本来人間がやらなくてよい仕事を任せることが重要になります。それにより生み出した貴重な時間を如何に使うかが、組織においても個人に於いても大切になるでしょう。


「人間は自然によって生かされてきた。・・・この自然へのすなおな態度こそ21世紀への希望であり、君たちへの期待でもある。」(21世紀に生きる君たちへ;司馬遼太郎)
中村桂子氏色紙