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2023.06.30理事長メッセージ

理事長からのなずなメッセージ#214 一人一人の善行のすすめ

2023.7.1
市川学園理事長・学園長 古賀正一

 1学期も終わりに近づき、中学1年生、高入生も学校生活に慣れてきました。梅雨の時期の行事は天気がいつも心配ですが、中学体育大会を学年ごとに日を分けて開催致しました。3日間とも晴天の中実施することができ、観戦いただいた保護者の皆様にはお楽しみいただけたと思います。また今年の芸術鑑賞会は、高2は宝塚劇場で宙組公演「カジノ・ロワイヤル」、他の5学年は國枝記念国際ホールにて2日間3回公演でわらび座ミュージカル「いつだって青空」を鑑賞しました。

 今年は国際研修も夏休みを中心に徐々に拡大できるよう計画しています。夏の海外研修は、ボストン地区・ダートマス大学研修にシンガポール研修を新たに加え合わせて69名が参加、国内研修には学園・神田外語大共催のグローバル・イシュー探究講座、Global Studies Program(旧エンパワメントプログラム)、巣鴨学園、鴎友学園等と連携のDouble Helixプログラムなどで94名が活動します。
 また文科省トビタテ!留学JAPAN「新・日本代表プログラム」(第2ステージ:2023年度~27年度)は、若い時期の海外経験を将来の留学につなげるため高校段階からの留学支援を拡充するものです。目標は5年間で高校生4000名、大学生等1000名以上を支援するプログラムで、今年度は708名(443校)が採用されました。そのうち当学園は11名が採用され、全国トップでした。第1ステージ開始から今年度までの累計は44名で全国3位、関東(含む東京都)地区では1位でした。
 21年度卒業生で米国リベラルアーツカレッジの名門Swarthmore Collegeに進学した稲葉慎太郎君による保護者向け講演会を校内で開催し、約100名が参加されました。これらのことから生徒や保護者の間で海外留学への関心が拡大していることがわかります。現在、在校生の中で海外での生活経験者は約350名(全生徒数の15%)、そのうち帰国生入試で入学した生徒は約30%です。6月初旬に帰国生保護者会が開かれています。今後さらに海外で活躍する人が増えることを期待します。

 さて生徒を立派な紳士淑女に育成するには、社会での約束事、マナーやモラルが大切であり、人間教育の基本です。このため生徒指導部をはじめ担任や教職員が生徒の自主性を生かし、自分たちで考えるよう日々指導しています。人に迷惑をかけないこと、黄金律である「他人から自分にしてもらいたいと思うような行為を人に対してせよ」が基本です。「さすが市川学園生」と言われるよう実践することが重要です。
 このところ、生徒による他人への小さな善行、即ち困っている人の救助、弱者への心づかい、バス内で席を譲る思いやり、周辺をきれいにする掃除、学内外の明るい挨拶など数々報告されています。最近も高齢の夫人が路上にうずくまっているところを介抱し救急車を呼び助けた事例、バスで妊婦や弱者の方の援助や積極的に席を譲った事例で、感謝の電話が入っています。そのような生徒を積極的に発見し誉め、良い事例とし共有し、必要により校長表彰し校内で広めることを推進しています。
 善行即ち善いことをすると、おこなった本人の気持ちが良く、幸福感を感じます。互いの挨拶、世話になる警備員や清掃の方などへの生徒からの明るい挨拶は、相手も嬉しいし生徒本人も気持ちがよく、学園を明るくしています。まさに善行は快感であり、自利とは利他をいう、情けは人の為ならずの如く、他人への思いやりに基づく行動は、自然に自分にかえってきます。
 創立者古賀米吉は、公的(国県市)な叙勲や表彰でなく、地域の目立たぬ善行、小さな親切に光を当て、善行を推進すべく、社会教育活動の一環として1951年「市川善行会」を立ち上げ、地域や学校における個人・グループの善行を称え表彰してきました。所得倍増計画時代の1961年の市川市民新聞の年頭所感に「善の国日本」と題して概要次のような年頭の辞を述べています。
 『「所得倍増」のアドバルーンが空高くあがっている。富の国日本の建設に進んで行く。しかし富は間違いなく幸福を持ってきてくれるであろうか。富ばかりにたよって、人間は仕合わせになれるであろうか。そうではあるまい。富んで亡びた国があり、富んで不幸になった人がある。そこで私は、「善の日本」の建設を提唱したい。むかし富国強兵といった。今は富国善人といいたい。』(「私学教育に明け暮れる」P282)また逝去する3日前の絶筆は、善は快感とし、善行への思いを最後まで強くもっていたのです。
 「市川善行会」の活動は現在まで71年間継続され、毎年多くの善行の個人やグループを発掘・表彰してきました。コロナ前の19年度までに1428名、127団体の善行表彰が行われました。歴代会長は全て学園関係者で、現会長(6代目)井上喜久男氏は高校15回卒業生であり、事務局は市川市教育委員会です。永年の関係者皆様のご尽力に心から感謝と敬意の念を深くします。コロナ禍の3年間、実質的活動は少なかったが、今年度から再開し、市内各自治会・学校・公共機関等の推薦を受け12月に表彰式が行われるとうかがっています。
 国内外共に多事多難、先行き不確実な時代の今こそ、一人一人の小さな善行の集積こそが、世の中を少しずつ変え、明るい未来につながると確信します。

「善は結局悪に勝つ。その審判に信頼して善行を積みかさねてゆきたいものである。」・・・23年市川市役所特別展示『市川市ゆかりの偉人(レジェンド)たちの「名言」展』から、古賀米吉の言葉